貯金が1,000万円を超えたことに対して、努力を重ねて達成した人もいれば、特に意識せずに貯金を続けていたら貯まった人もいることでしょう。
達成感をおぼえるタイミングではありますが、近年の情勢を考えるなら、けっして安心できる金額とは言い切れません。
また、1,000万円の貯金を達成したことをきっかけに、これまでの貯金に対する向き合い方から意識を改める必要があります。
本記事では、貯金が1,000万円を超えたら何をするべきかを解説し、貯金だけではなく検討したい投資・資産運用も紹介します。
貯金1,000万円を超えた人の割合や、達成した人の意識調査も紹介するため、ご自身の現状把握にも役立つことでしょう。
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貯金1,000万円を超えた人の割合を二人以上の世帯・単身世帯に分け、年代別・年収別の割合でまとめました。
年代別の貯金1,000万円を超えた人の割合は、以下のとおりです。
| 世代 | 二人以上の世帯 | 単身世帯 |
| 20代 | 4.1% | 1.6% |
| 30代 | 15.1% | 16.4% |
| 40代 | 22.7% | 17.0% |
| 50代 | 29.7% | 22.7% |
| 60代 | 42.2% | 34.2% |
| 70代 | 43.9% | 39.4% |
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査 各種分類別データ』より筆者作成
20代は、二人以上の世帯・単身世帯も同様に、ほとんど達成している人がいないことがわかります。
30代になれば3倍以上に割合が増加しますが、少ない水準にあり、20%に近い割合に落ち着くのは40代~50代です。
70代になっても全体の達成率が50%を超えることはなく、どの世代であっても半数以上の人が達成できていません。
貯金の平均値が1,000万円を上回るのは50代であり、二人以上の世帯で1,147万円、単身世帯で1,391万円です。
年収別の貯金が1,000万円を超えている人の割合は、以下のとおりです。
| 年収 | 二人以上の世帯 | 単身世帯 |
| 300万円未満 | 16.3% | 18.9% |
| 300万円~500万円未満 | 27.4% | 23.0% |
| 500万円~750万円未満 | 31.0% | 43.1% |
| 750万円~1,000万円未満 | 45.1% | 72.3% |
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査 各種分類別データ』より筆者作成
年収が高いほど、貯金1,000万円を超える人の割合も高くなっていることがわかります。
年収500万円~年収750万円未満と比較して、年収750万円~年収1,000万円未満は、貯金1,000万円を超えた人の割合が大きく増加します。
貯金1,000万円を達成するために、まとまった貯蓄がしやすい年収と考えられるでしょう。

貯金1,000万円を超えたらするべきことを解説する前に、超えた場合の注意点を3つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
日本では、銀行が万が一破綻した時にも預金者のお金を守るために、ペイオフ(預金保護制度)が導入されています。
1つの銀行あたり、1,000万円の額面とその利息が保護される仕組みです。
しかし、1,000万円を超える貯金を1つの銀行にまとめて預けていると、超えた部分はペイオフの対象外になります。
例えば、ある銀行に1,500万円を預けて経営破綻した場合、1,000万円までは保護されますが、残りの500万円は返ってこない可能性もあると理解しておきましょう。
日本の大手銀行がすぐに破綻することは考えにくいですが、国内でも一部の銀行・信用組合が破綻した事例もあり、絶対に安全と言い切れないでしょう。
1,000万円はペイオフの基準となる額面であるため、貯金が1,000万円を超えた場合は必ず確認しておきたいところです。
貯金のすべてを現金で所有している場合は、円安・インフレにより貯金の実質的な価値を大きく下げるリスクがあります。
貯金がすべて日本円の場合、1ドル=150円であれば、1,000万円は約6万6,000ドルの価値を持つことになります。
一方で、将来的に1ドルが200円になった場合、1,000万円の価値は5万ドルまで目減りするでしょう。
同じ1,000万円でも日本円の購買力が下がったことになるため、円安で実質的な資産価値が減少します。
そのため、日本円だけでなく外貨や海外の金融商品を保有すれば、日本円の価値が下がるリスクを軽減可能です。
また、インフレは貯金が増えるほど意識しておきたいポイントになります。
例えば、物価が2%上昇した場合の資産価値の目減りを考えてみましょう。10万円の貯金であれば購買力は9万8,000円程度に下がり、実質的には2,000円の損失です。
しかし、1,000万円の貯金になれば、実質的な購買力は980万円程度に下がることから、20万円の損失になるため、貯金が多いほどインフレの影響を受けやすいでしょう。
低金利の時代では貯金が1,000万円を超えた場合、すべての貯金を銀行の預金に日本円で預けること自体がリスクになります。
最後に、資産は目的別に分けて管理しなければ、使っていいお金と将来に残すべきお金の区別がつかなくなります。
貯金を続けてきた人のなかには、まとまったお金を使うことを意識したことがないため、すべて自由に使えるお金と勘違いすることもあるでしょう。
特に住宅ローンの頭金の支払いなど、まとまったお金を使うにあたって、残すべきお金がわからない状態は致命的な問題を引き起こすかもしれません。
1,000万円を貯めたことがあっても、手元に必要な資金を残さなかったことで生活に支障をきたすケースも考えられます。
反対に、使っていいお金がわからないことを理由に効果的に使用できず、貯め続けるだけの状態が続く可能性もあるでしょう。
よって、1,000万円を超える貯金ができた場合には、使えるお金と貯蓄すべきお金を区別するお金の整理が必要になります。

貯金1,000万円を超えたらするべきことは以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
貯金が1,000万円を超えた段階で、使えるお金と貯蓄すべきお金の分類をしていない場合は、生活防衛資金を中心にお金を分類するところから始めましょう。
生活防衛資金とは、突然の病気やケガによる入院、リストラや転職で収入が途絶えるといった、不測の事態に備えるための資金を指します。
具体的な目安は、生活費の約6カ月分の資金を確保することが望ましいと考えられています。
生活防衛資金に加えて、住宅の購入資金や車・大型家電の買い替え費用など、予測できる大きな出費がある場合は確保するようにしましょう。
他の資金は当分使用しないと考えられるため、使えるお金に分類できます。
資産運用をおこなう場合も、使えるお金に分類された資金を用いて始めることになります。
すべての貯金がペイオフの対象になるよう、1つの銀行に預ける金額を1,000万円以内に抑え、複数の口座に分散しましょう。
そうすると、すべての銀行口座の残高がペイオフの対象になるため、口座を分散すれば貯金がどれだけ増えてもペイオフを気にすることなく貯金が可能です。
口座の分散は、用途別に分散して管理することも選択肢の一つです。
例えば、メインの口座は当月の生活費と生活防衛資金、2つ目の口座に自由に使えるお金、3つ目以降の口座では各種用途別に口座を開設することが考えられるでしょう。
また、証券会社の口座で管理された金融商品は、原則として証券会社の資産とは分別して管理されるため、破綻した場合は額面に関係なく返還されます。
自由に使えるお金を利用して広く資産運用をおこなう場合は、口座の分散は意識しなくても、ペイオフを特別に対策する必要はないかもしれません。
1,000万円を超えるすべての貯金を日本円で銀行に貯蓄するのは、低金利であることから、円安時やインフレ時のリスクが高いです。
現金のままでは、さまざまな理由から資産の実質価値が目減りするリスクを抱えています。
よって、自由に使える資金を利用して資産運用を実践することで、今ある貯金の価値を将来にわたって守れるでしょう。
投資は元本割れの危険性がありますが、リスクを恐れてすべての資金を貯金しても、円安やインフレを理由に額面は減らなくても、実質的に損をしてしまう可能性があります。
保有している資産がすべて現金の場合は、1,000万円を超えたタイミングをきっかけに、資産運用をおこなうことを検討しましょう。

貯金1,000万円を超えた人が、お金のことや将来に対してどのような意識でいるのか、調査の内容を以下にまとめました。
金融資産とは、現金・預金、株式、投資信託、債券、保険商品など、経済的価値のある財産の総称です。
1,000万円の資産がある人が貯金を貯めて、資産運用をおこなう動機を以下にまとめました。
| 動機一覧 | 二人以上の世帯※ | 単身世帯※ |
| 病気や不時の災害への備え | 52.4% | 54.5% |
| 子どもの教育資金 | 23.2% | 0.0% |
| 子どもの結婚資金 | 3.8% | 0.7% |
| 住宅の取得または増改築などの資金 | 5.6% | 1.4% |
| 老後の生活資金 | 77.4% | 74.8% |
| 耐久消費財(自動車・家電)の購入資金 | 17.6% | 11.2% |
| 旅行・レジャーの資金 | 20.4% | 26.6% |
| 納税資金 | 3.3% | 2.1% |
| 遺産として子孫に残す | 6.9% | 4.2% |
| 安心感 | 15.5% | 25.9% |
| その他 | 1.8% | 2.1% |
※3つまでの複数回答であるため全体の割合が100%以上である
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査 設問間クロス集計』より筆者作成
病気や不時の災害への備えは、二人以上の世帯・単身者ともに高く、一番高い項目は老後の生活資金でどちらも7割を超えました。
二人以上の世帯では、子どもの教育資金の割合が高いのに対して、単身世帯ではほとんど動機として選ばれていないなど、世帯ごとの差もあります。
明確な目的がなくても、将来に対する備えや安心感を得るために、金融資産の保有を続けているケースも考えられるでしょう。
住宅の購入・自動車・家電の買い替え・海外旅行の資金準備など、積極的にお金を消費する理由がなくても貯金・資産運用をおこなっている人は多いです。
金融資産の保有目的でもっとも多かった動機が、老後の生活資金の用意です。
貯金1,000万円の人の老後の生活に対する意識調査を以下にまとめました。
| 老後に対する意識 | 二人以上の世帯 | 単身世帯 |
| それほど心配していない | 18.3% | 26.6% |
| 多少心配である | 55.5% | 42.0% |
| 非常に心配である | 26.2% | 31.5% |
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査 設問間クロス集計』より筆者作成
貯金が1,000万円あっても老後に対して心配であると答えた人の割合は、二人以上の世帯で8割、単身世帯で7割を超えて高い水準にあります。
そのなかでも、多少心配であるという意見がどちらの世帯でも高い割合を占めました。
1,000万円の貯金があっても安心という意見は少なく、老後を安心して生活するには不足していると考えられています。
老後の生活の不安を理由に貯金を続けている場合は、今ある資金の価値を守る長期的な資産運用が求められます。
貯金1,000万円の人が、今後保有したいと考える金融資産を以下にまとめました。
| 金融資産 | 二人以上の世帯※ | 単身世帯※ |
| 預貯金 | 49.9% | 42.0% |
| 信託(ヒットなど) | 3.1% | 4.9% |
| 積立型保険商品 | 6.4% | 6.3% |
| 個人年金保険 | 12.0% | 11.2% |
| 公共債(国債など) | 6.9% | 7.0% |
| 公共債以外の債券 | 2.8% | 3.5% |
| 株式 | 32.1% | 37.1% |
| 株式投資信託 | 25.4% | 23.1% |
| 公社債投資信託 | 4.6% | 2.1% |
| 外貨建金融商品 | 6.6% | 9.1% |
| 不動産投資信託 | 3.8% | 4.2% |
| 保有希望なし | 20.1% | 26.6% |
※3つまでの複数回答であるため全体の割合が100%以上である
金融広報中央委員会『令和5年(2023年) 家計の金融行動に関する世論調査 設問間クロス集計』より筆者作成
預貯金を除くと、株式が30%を超えてトップになっており、投資に積極的な状態にあることがわかります。
投資信託はプロに運用を任せられる金融商品であり、投資対象が株式であれば株式投資信託、不動産であれば不動産投資信託などの種類があります。
各種投資信託では、株式投資信託の割合が20%程度と多く、他の投資信託よりも広く希望されている商品です。
貯金が1,000万円を超えている人は、老後の生活資金の準備などを理由に、金融商品の保有に積極的な人が多いと考えられるでしょう。

最後に、貯金1,000万円を超えたら検討したい投資・資産運用の方法を5つまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
NISAは、日本政府が国民の資産形成を後押しするために用意した、投資の利益に税金がかからない制度です。
通常、株式や投資信託などで利益が出ると20.315%の税金がかかります。しかし、NISAを利用すると税金がゼロになります。
金融商品のなかでも人気が高い株式・投資信託に投資する場合、NISAを活用して長期的に投資すれば効率よく資産を増やせるでしょう。
NISAには成長投資枠とつみたて投資枠があり、成長投資枠では幅広い株式・投資信託、つみたて投資枠では長期投資に適した厳選された投資信託に投資が可能です。
ただし、市場の変動や購入する金融商品によっては損をする可能性もあるため、リスクのある投資方法です。
特に、株式を投資対象とする株式投資信託は、大きなリターンが狙える一方で、損失が膨らむ可能性もあるため、注意が必要になります。
iDeCoは、自分で掛金を出して将来の年金を準備する、老後の資金準備に特化した資産運用の方法です。
運用対象は投資信託だけでなく、定期預金、保険商品を選ぶこともできます。
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象であるため、所得税・住民税の節税効果も期待できるでしょう。
運用の利益が非課税になるだけでなく、将来受け取る時も退職所得控除や公的年金控除を使用できるため、税制優遇が手厚い制度です。
ただし、原則として60歳まで引き出せないため、途中でお金が必要になっても自由に解約できません。
運用商品が投資信託の場合は、元本割れのリスクもあるため、リスクとリターンをコントロールするには金融商品の選択も重要になるでしょう。
貯蓄型保険は、保障と貯蓄を兼ね備えた保険商品であり、保険に加入しながら満期時には返戻金が受け取れる仕組みです。
1,000万円を超える資産を持つ人にとっては、万が一の際には保障を受けながら貯蓄ができる、資産の一部を安定的に運用する方法になるでしょう。
一方で、掛け捨て型保険と比較すると保険料が割高になりやすく、途中解約をすれば元本割れするリスクもあります。
保険料の支払いが滞ることがないように、計画的に積み立てる必要があるでしょう。
NISAなどで株式・投資信託への投資をおこなう場合は、リスクの低い貯蓄型保険を金融資産に組み入れることで、資産の分散が期待できます。
外貨預金は、米ドルやユーロなどの日本円以外の通貨を銀行に預金することです。
外貨は低金利の日本円よりも高い金利が期待できるため、高い利息を受け取りやすいでしょう。
円安が進めば為替差益も得られるため、通貨の分散により日本円の価値が低くなるリスクを対策できます。
一方で、円高になれば外貨から円に戻した場合に為替差損が発生するため、円換算で損をしてしまう危険性もあります。
そのため、すべての日本円を米ドルなどの特定の外貨に換えるのではなく、複数の通貨に分散すると、リスクとリターンのバランスを取りやすくなります。
個人向け国債は、日本政府が個人投資家向けに発行する債券です。
元本保証があり、最低1万円から購入できるため、初心者でも安心して投資しやすい商品です。
債券は発行体の破綻により投資額が返還されないこともありますが、個人向け国債の発行体は日本政府であるため、事実上破綻リスクがほとんどありません。
銀行の定期預金よりも金利が高く設定されることが多く、より安全を重視して投資したい人に向いているでしょう。
ただし、株式と比較して期待できるリターンは大きく下回るため、長期的な視点ではインフレに追い付かない可能性もあります。
貯金が1,000万円を超えるとペイオフの対象外になるリスクがあり、円安・インフレによる実質的な価値の目減りが懸念されます。
1,000万円の貯金があっても「老後の生活が安心」と考える声はほとんどないため、長期的な視点で考えるなら、貯金だけではなく資産運用をおこなう姿勢も重要です。
ただし、資産運用には元本割れのリスクもあり、自分だけで判断することは難しいかもしれません。
そのため、1,000万円の貯金をどのように分散して運用するべきか悩む場合は、専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)に相談しましょう。
貯金が1,000万円を超えたら、ただ貯める段階からどう守り、どう増やし、どう使うかを考える段階に移行します。
これまでとは違う貯金を始める第一歩として、専門のFPに相談し、自分に合った最適な資産管理の方法を見つけることが大切です。