住宅購入は数千万円もの高額な金額になるため、親からの支援を受けたいと考えている方も多いでしょう。実際のところ、親からの支援の平均はいくらなのでしょうか。
この記事では、住宅購入時に親から支援を受けた人の割合と平均額をまとめました。また、懸念点である贈与税の仕組みも解説します。これから住宅購入を考えている方は参考にしてください。
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実際、住宅購入時に親からの支援を受けた人はどれくらいいるのでしょうか。
一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査<第28回(2023年度)>」の結果によると、新築住宅で親からの支援を受けた人の割合は17.8%でした。中古住宅の場合は、11.6%とさらに少ない割合です。
住宅購入で利用したもの | 2022年度 | 2023年度 | |
新築住宅 | 親からの支援 | 20.2% | 17.8% |
祖父母からの支援 | 3.4% | 1.9% | |
中古住宅 |
親からの支援 | 12.6% | 11.6% |
祖父母からの支援 | 0.6% | 0.4% |
一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査<第28回(2023年度)>」より引用
2022年と比較すると全体的に割合が減少しており、実際のところ、5人に1人も親からの支援を受けていませんでした。また、祖父母からの支援はほとんどの人が支援を受けていません。
親からの支援を受けている人の割合が少ない一方、新築住宅を購入した7割以上が自己資金と住宅ローンを利用しているようです。この結果を踏まえると、自力で住宅購入をすることが一般的でしょう。
住宅購入で利用したもの | 2022年度 | 2023年度 | |
新築住宅 | 現金、預貯金など | 68.2% | 70.1% |
銀行などの民間ローン | 77.2% | 73.2% | |
中古住宅 |
現金、預貯金など | 66.4% | 64.5% |
銀行などの民間ローン | 69.3% | 66.0% |
一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査<第28回(2023年度)>」より引用
ほかにも、住宅の売却金を利用して、別の住宅を購入するケースも見受けられました。近年では、マンションの資産価値が高騰しており、売却金も高くなっています。
そのため、今後は売却金を利用して住宅購入をする割合が増えていくと予想できるでしょう。
住宅購入時に親からの支援を受けた人は少数派でしたが、支援を受けた人の平均額はどれくらいでしょうか。こちらも、一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査<第28回(2023年度)>」の結果をもとに見ていきましょう。
住宅購入で利用したもの | 2022年度 | 2023年度 | |
新築住宅 |
親からの支援 | 998万円 | 915万円 |
祖父母からの支援 | 1,155万円 | 303万円 | |
中古住宅 |
親からの支援 | 662万円 | 734万円 |
祖父母からの支援 | 560万円 | 1,700万円 |
一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査<第28回(2023年度)>」より引用
※1万円未満は切り捨て
親からの支援の平均額は、915万円でした。中古住宅の場合は734万円と、新築住宅と比較して、平均額が下がっています。結果を踏まえると、親からの支援を受けた人はまとまった金額をもらっているとわかりました。
また、祖父母からの支援の平均額も高額な傾向があります。なかには、1,000万円を超える支援を受けているケースもあり、ごく少数ながら支援をする祖父母の経済的余裕がわかるでしょう。
親や祖父母などからお金で支援を受けると、贈与税がかかるケースがあるので注意しましょう。贈与税は、年間110万円を上回る金額に対して発生します。
例えば、直系尊属(父母や祖父母など)から110万円を超える支援を受けた場合は、以下の贈与税が発生するのでご注意ください。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
国税庁「贈与税の計算と税率」より引用
親からの支援の平均額である915万円を当てはめると、915万円(支援金)-90万円(控除)=825万円から30%の税率がかかるため、247万5,000円を贈与税として払わなくてはいけません。
しかし、住宅の購入を目的とした贈与を受けた場合は、住宅取得資金贈与の特例が適用されます。この特例を利用すれば、500万円〜1,000万円まで非課税になるため、110万円以上の支援も受けやすくなるでしょう。
住宅購入で親からの支援を受ける場合は、住宅取得資金贈与の特例を利用するといいでしょう。
住宅取得資金贈与の特例とは、住宅購入や増築資金を親や祖父母が贈与した場合、最大1,000万円までが非課税になる制度です。本来なら110万を超える贈与は贈与税がかかりますが、住宅取得資金贈与の特例により非課税枠が増えるため、贈与税を気にすることなく支援できるでしょう。
また、住宅取得資金贈与の特例を利用した1,000万円の非課税枠に加え、贈与税の基礎控除額である110万円も併用できます。つまり、合計で1,110万円までなら贈与税なしで支援を受けられます。
ただし、住宅取得資金贈与の特例が適用されるためには、贈与税の申告をしなければいけません。申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間です。手続きの際に必要な書類は、国税庁のホームページにあるチェックシートを確認しましょう。
非課税枠より多く親から支援をしてもらう場合は、非課税枠をはみ出した部分のみ贈与税がかかります。例えば、親から1,500万円の支援を受けた場合を考えてみましょう。この場合、1,500万円から1,110万円を引いた額である、390万円に贈与税が発生するため、注意しましょう。
通常の贈与税と同じ計算になるため、390万円(課税される支援金)-10万円(控除)=380万円から15%の税率がかかります。つまり、57万円の贈与税を払わなくてはいけません。
高額になるほど贈与税が増えるため、非課税枠の範囲内で親からの支援を受けることをおすすめします。
住宅取得資金贈与の特例のほかに、相続時精算課税制度を併用して相続税をカットする方法もあります。相続時精算課税制度とは、2,500万円までの贈与が非課税になる制度です。
これだけ聞くと「住宅取得資金贈与の特例よりもよいのでは? 」と思うかもしれません。しかし、相続時精算課税制度では、贈与した人が亡くなって相続が発生した場合、支援を受けた金額に対して相続税が発生する可能性があります。
相続税の税率は、下記の通りです。
各法定相続人ごとの取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
国税庁「相続税の税率」より引用
ただし、相続税は基礎控除額があり、3,000万円×(600万円×法定相続人の数)の計算式によって相続税は減少します。例えば、父親が亡くなって母親と自分に相続が発生した場合は、3,000万円×(600万円×2人)で基礎控除額は4,200万円です。
この場合、相続時に支援を受けた金額と遺産の総額が、4,200万円以下だった際は、相続税を払う必要がなくなります。4,200万円を超えた場合は、自分の取得金額に対して相続税が発生するため、注意しましょう。
住宅購入時に親からの支援を受ける場合は、住宅取得資金贈与の特例や相続時精算課税制度をうまく利用することが大切です。正しく適用するためのポイントを押さえておきましょう。
ここからは、親からの支援を受ける場合に押さえておくべきポイントを解説します。
親から支援を受ける場合は、契約書を作成しておきましょう。なぜなら、契約書を作成して書面に残すことで、住宅購入を目的とした支援であると証明できるからです。
契約書の書き方にルールはありませんが、以下の項目を契約書に記載しましょう。
・贈与してもらう人の名前
・贈与する人の名前
・贈与した日付と贈与する約束をした日付
・贈与する目的と内容
・贈与した金額
・どのようにして贈与するのか
万が一、税務署から住宅取得資金贈与の特例に対して質問があった場合でも、書面に残しておくと、適切な対応が可能です。今後のトラブルを回避するためにも、契約書の作成をおすすめします。
住宅取得資金贈与の特例は、あくまで住宅購入の際に利用する制度です。そのため、住宅関連の出費でも住宅購入に使用しなければ対象外となるため注意しましょう。
具体的には、以下の用途は対象外となります。
・手続きに必要な登記費用や手数料
・家の火災保険
・家具や家電の費用
・引越し費用
ただし、110万円以下の支援は贈与税の対象にならないため、住宅購入以外に使う場合は、金額を調整しましょう。
贈与税が気になる場合は、支援ではなく親からお金を借りる方法もあります。金融機関よりも返済期間や金利に厳しくないため、無理のない返済が可能になるでしょう。
ただし、親子間の借金は、場合によっては贈与とみなされるため注意が必要です。融資としてみなされるには、下記のポイントを意識しましょう。
・返済額が現実的な金額である
・契約書を作成する
・定期的に返済をする
・利子を支払う
金利をゼロにしてしまうと、融資ではなく贈与とみなされる可能性があります。お金を借りた場合は、少額でも利子を払うようにしましょう。
新築住宅を購入したときの親からの支援の平均額は915万円、中古住宅の場合は734万円でした。どちらも贈与として扱った場合は、贈与税がかかるため注意しましょう。
住宅購入の支援を受ける場合は、住宅取得資金贈与の特例や相続時精算課税制度を利用して節税することをおすすめします。高額なお金のやり取りだからこそ、慎重に進めましょう。
弊社では住宅購入前後に特化してお金の相談を承っております。「住宅購入の頭金っていくら必要? 」「住宅の予算はいくらが妥当? 」など、お困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。