物件の購入後の費用と聞くと、住宅ローンを思い浮かべる方も多いと思いますが、住宅ローンの支払い以外に維持費がかかるのを忘れてはいけません。
維持費とは、マンションや戸建てなどの物件に住み続けるための費用のことで、住宅ローンの残債にかかわらず支払い続ける必要があります。そのため、維持費も考えた上で物件を選ばなければいけません。
この記事では、マンションと戸建ての維持費の内訳を解説します。維持費を抑えるポイントも解説するので、今後の支払いが心配な方は参考にしてください。
コンテンツページ
結論から言うと、戸建てよりもマンションの方が維持費が高い傾向にあります。理由は、マンションに住み続ける限り、継続してかかる費用が多いからです。
マンションの場合、税金や保険料だけではなく、マンションを管理するための「管理費」とマンションの修繕に使われる「修繕積立費」を支払わなくてはいけません。
一方で、戸建ての場合はこのような費用がかからないため、維持費の合計金額に差が開いてしまいます。
よって、維持費を抑えたいのであれば、戸建ての方がおすすめです。
維持費の差はあれど、マンションにも戸建てにも共通してかかる維持費があります。
それは、税金と保険料と修繕費の3つです。
税金は「固定資産税」と「都市計画税」の2種類があり、それぞれ年に1回、もしくは4回に分割して払う必要があります。固定資産税は固定資産税評価額×1.4%の金額、都市計画税は固定資産税評価額×0.3%の金額が目安です。
一般的に、新築マンションの固定資産税の目安は10~30万円、新築戸建ての固定資産税の目安は10~15万円程度なので覚えておきましょう。こちらも、戸建ての方が安い傾向にあります。
保険料は、火災保険や地震保険などの保険のことです。特に、火災保険は加入を義務付けられている物件が多く、万が一に備えて加入しなければいけません。地震保険や水害補償など、任意の保険に加入する場合は金額が増えるので注意しましょう。
修繕費は、経年劣化による破損や水漏れなどを修理するための費用です。築年数にもよりますが、長く住む以上は必ずかかる費用なので覚えておきましょう。
ここからは、物件別に維持費の目安を解説します。
マンションに30年間住んだ場合の維持費は、約1,762万円です。
では、マンションの30年間にかかる維持費の内訳を見てきましょう。
マンションに30年間住んだ場合の税金は、360万円程度が目安です。
新築マンションに住んだ場合、新築住宅の減税を受けられるので建物の固定資産税が2分の1になります。そのため、減税がなくなった築10年くらいが一番高額になるので注意しましょう。
マンションに30年間住んだ場合の保険料は、30万円程度が目安です。
火災保険料は月額ではなく複数年分まとめて払うのが一般的で、まとめて払うと少し安くなります。そのため、維持費を安くしたいならまとめての支払いがおすすめです。
戸建てよりもマンションの方が火災や自然災害の被害を受けにくいため、保険料が安いというメリットがあります。
マンションに30年間住んだ場合の修繕費は、200万円程度が目安です。
この修繕費は専有部分のことで、自分の家のトイレやバスタブ、キッチンなどを修繕する際に使われます。一戸建てと比較すると屋根や庭などの修繕をする必要がないため、安く抑えられるケースも多いです。
マンションに30年間住んだ場合の管理費は437万円、修繕積立金は375万円程度が目安です。この金額は、国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果 」をもとにしています。
管理費は、共用部分の清掃や自動ドア、エレベーターなどのメンテナンスに使われる費用です。また、修繕積立金は、マンションの経年劣化により共用部分の外壁などの大規模な修繕をするために積み立てておく費用で、こちらも必ず支払わなければいけません。
マンションの維持費は、管理費・修繕積立金が大幅にかかることを覚えておきましょう。
マンションに30年間住んだ場合の駐車代は、360万円程度が目安です。毎月1万円と仮定した場合の金額なので、もう少し費用を安く抑えられるケースもあれば、これ以上高くなるケースも考えられます。
戸建ての場合は、駐車場をつくれば無料で停められるので、この点もマンションの方が維持費がかかる理由の一つでしょう。
戸建てに30年間住んだ場合の維持費は、約786万円です。
では、戸建ての30年間にかかる維持費の内訳を見ていきましょう。
戸建てに30年間住んだ場合の税金は、240万円程度が目安です。
基本的に、マンションよりも戸建ての方が税金が安い傾向にあります。ただし、土地付き住宅を購入した場合は、土地の税金によって相場よりも維持費が高くなるため注意が必要です。
戸建てに30年間住んだ場合の保険料は、60万円程度が目安です。
戸建ての火災保険料は、大きさや構造によって値段が異なりますが、マンションよりも保険料が高額になる傾向にあります。また、築年数が経っている物件の場合は保険料が高くなるケースもあるので、確認しておきましょう。
戸建てに30年間住んだ場合の修繕費は、486万円程度が目安です。この金額は、アットホーム株式会社による、「『一戸建て修繕』の実態調査 2023」の結果から30年間の費用を算出したものです。
築20年前後になると、1回目の修繕が必要になるケースがほとんどで、外壁や屋根など修繕費の平均価格が100万を超える高額な修繕も必要です。
修繕経験者が多い場所のトップ5を見ていきましょう。
修繕場所 | 修繕経験者の割合 | 修繕費合計平均 |
外壁 | 79.2% | 138.3万円 |
トイレ | 75.4% | 35.5万円 |
屋根 | 73.6% | 113.8万円 |
給湯器 | 73.0% | 41.9万円 |
お風呂 | 58.8% | 95.4万円 |
参考:アットホーム株式会社「『一戸建て修繕』の実態調査 2023」
この5つは、半数以上の割合で修繕をしているので、修繕費用を積み立てておくことをおすすめします。
では、あらためてマンションと戸建ての維持費を比較しましょう。
マンション | 戸建て | |
税金 | 約360万円 | 約240万円 |
保険料 | 約30万円 | 約60万円 |
修繕費 | 約200万円 | 約486万円 |
管理費・修繕積立金 | 約812万円 | – |
駐車代 | 約360万円 | – |
合計金額 | 約1,762万円 | 約786万円 |
この結果を見ると、管理費や修繕積立金、駐車代がないため戸建ての方が維持費が安くなっています。しかし、場合によっては戸建ての方が維持費が高くなるケースもあります。
ここからは、戸建ての維持費が高くなるケースを見ていきましょう。
先述の調査結果で見たように、外壁や屋根は、70%以上の方が修繕を経験している部分のため、最低でも1回は修繕をする可能性が高いです。しかし、気候条件の厳しい地域や高温多湿な地域など、住んでいる場所によっては修繕回数が多いケースもあります。
物件の経年劣化が原因だけではなく、気候や災害による原因の場合、修繕を繰り返さなければならない可能性もあるので、修繕費がかさんでしまうでしょう。
外壁や屋根の修繕費用を抑えるためには、定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。建物の経年劣化や損傷箇所を早期に発見し、大きな修繕に発展する前に対処することが大切です。
戸建ての場合、親・兄弟との同居や介護でバリアフリー化が求められるなど、さまざまな理由でリフォームが必要になるケースがあります。
リフォームをする場合は、数十万円から数百万円以上の費用が必要になるため、総合的に維持費が高くなる可能性があるでしょう。特に、古くなった設備の取り換えや間取りの変更など大規模な修繕になる場合は、費用が高額になることが予想されます。
将来的にリフォームを考えている場合は、リフォーム費用を見越して、余裕を持った予算計画を立てるようにしましょう。
火災保険など必要最低限の保険にしか加入していない場合、水害や台風などの被害に遭ってしまうと、大規模な修繕を強いられる恐れがあります。
例えば、豪雨や洪水によって庭や建物周辺が浸水して、排水設備や壁、床などにダメージが生じるかもしれません。また、強風や台風によって屋根や外壁に損傷が生じたりした場合、修繕や補修が必要となるでしょう。
物件の内部にも損傷や浸水などの被害があった場合は、さらに修繕費用がかかります。一方で、マンションの場合は高層階に住んでいれば、物件の内部まで影響が及ぶことは考えにくいでしょう。
ハザードマップを見て、危険な地域に住んでいると判断した場合は、防災対策や保険の加入を検討することをおすすめします。
維持費は必ずかかる費用ですが、相場通りにかかるわけではありません。あくまで目安なので、安く抑えることも可能です。維持費を安く抑えられるのであれば、住宅ローンの支払いや貯蓄に充てたいですよね。
ここからは、マンションや戸建ての維持費を安く抑えるためのポイントを見ていきましょう。
マンションの維持費を安く抑えるには、購入時に戸数や設備内容、管理方法などを確認することがポイントです。
例えば、マンションの共用部分にメンテナンス費用がかかる設備を導入していたり、豪華な設計だった場合は修繕費がかかる可能性があります。
また、マンションの戸数もチェックしましょう。住民から管理費や修繕積立金を徴収しているため、戸数が多いと一人ひとりの負担が減る可能性があります。
マンションの修繕は築年数が経つごとに増えるため、築年数が新しい物件を選ぶのもよいでしょう。
戸建ての維持費を安く抑えるためには、品質がよく耐久性に優れた材質や構造を選ぶのがポイントです。
物件の購入の際に、少しでも費用を抑えようと安価な材質や構造を選ぶと、かえってメンテナンスの周期が早まり、修繕費が多くかかって損をする可能性があります。
家を建てるときは割高に感じるかもしれませんが、メンテナンスフリーの素材など老朽化や劣化がしにくい素材を選ぶことで、長持ちして維持費用が抑えられるでしょう。
また、アフターフォローのある業者を選ぶのも大切です。期間によっては無料メンテナンスで対応してくれるケースもあるため、購入後もサポートしてくれるかチェックしましょう。新築戸建ての場合は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、引き渡しから10年間の瑕疵(かし)保証をつけることが義務付けられています。
もし、建物の基礎や壁などに瑕疵があれば、建築会社や不動産会社に補償を求めることができるため、新築の購入を検討するのもおすすめです。
維持費が高く、もし途中でマンションや戸建ての維持費が払えなくなった場合は、すぐに関係各所の担当者に連絡しましょう。
例えば、固定資産税が払えない場合は税務署に連絡をして、支払い方法を相談するのがおすすめです。本来は年に1回か4回に分割して支払いますが、理由によっては減免が受けられたり、年12回の分割支払いなどの特別措置が認められたりする場合もあります。
維持費が払えない状況に陥っても、何もしないことが一番よくありません。そのまま放置していると、せっかく購入した物件に住めなくなってしまうので注意が必要です。
維持費が払えない状態が続くと、やがて物件が差押えになり、競売にかけられてしまいます。競売とは、物件を強制的に売却する方法のことです。競売が始まると、物件が自分のものではなくなるため、退去しなくてはいけません。
もし、競売後に物件がほかの人のものになっても家にいる場合は、不法占拠になるため強制的に立ち退きとなってしまいます。マイホームを失わないためにも、維持費は必ず滞納せずに支払いましょう。
この記事では、マンションと戸建ての維持費を解説しました。基本的にマンションの方が維持費がかかるケースが多いですが、戸建てに住んでいても災害などの思いがけぬトラブルにより、維持費がかさむケースもあります。
いざというときに慌てないためにも、普段から計画的に費用を積み立てておきましょう。