子育てにはさまざまな出費がかさむことから、安心し生活できるように子育て世代の貯金額の平均や目安を知りたい方もいることでしょう。
子育て世代が用意しておきたいお金は、子どもの出産費用と、子どもが学校に通う年齢になった時に必要な学校教育の費用があります。
貯金ができない場合は貯金がしやすい環境にあった独身時代と同様の感覚で貯金していないか見直し、資産運用など効率的に貯金を増やす方法も考えることがおすすめです。
この記事では、子育て世代の貯金額の平均値・中央値、子育てに関わる重要な出費のデータを紹介し、貯金できない理由と子育て世代におすすめの資産運用を解説します。
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子育て世代は一般的に20代~40代といわれることが多いです。
そのため、二人以上の世帯を対象に20代~40代の貯金額の平均値と中央値のデータを表にまとめました。
年代 | 平均値 | 中央値 |
20代 | 214万円 | 44万円 |
30代 | 526万円 | 200万円 |
40代 | 825万円 | 250万円 |
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)』より筆者作成
20代の子育て世代の貯金額の中央値は100万円以下であり、低い水準になっています。
20代の多くの子育て世代では、次に紹介する子育てに関わる重要な出費を考えると、必要な水準を満たせていない現状があります。
一方で、30代・40代であれば、中央値は200万円台に収束していますが、年代を重ねるほど平均値が大きく向上することから、同じ子育て世代でも貯金ができている層と貯金ができていない層で二極化しているといえるでしょう。
ご自身の年代の平均値・中央値を参考に、周りと比較して貯金ができているかどうか、現状を確認しておきましょう。
次に、子育てに関わる重要な出費である、出産費用・学校教育の費用のデータを紹介します。
出産費用の全国の平均値と主要七都市が所在する都道府県における平均値をあわせて紹介します。
地域 | 金額 |
北海道 | 40万2,651円 |
宮城県 | 47万9,596円 |
東京都 | 55万3,021円 |
愛知県 | 45万4,331円 |
大阪府 | 42万3,284円 |
広島県 | 45万7,017円 |
福岡県 | 42万2,344円 |
全国平均 | 45万2,288円 |
厚生労働省『出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について』より筆者作成
全国平均と比較すると北海道は5万円程度安く、一方で東京都は10万円以上高い以外は、基本的には平均値に収束しています。
出産費用の平均値が一番高い地域は東京都ですが、一番低い地域は35万1,774円で佐賀県となりました。
一部の地域を除いて出産費用は、全国平均を参照すれば把握できます。
子どもが成長して大きくなると、学校教育に費用がかかるようになりますが、公立と私立でかかる費用は大きく異なります。
そのため、公立と私立にわけて学校教育の費用を把握しておきましょう。
学校 | 公立 | 私立 |
幼稚園 | 16万5,126円 | 30万8,909円 |
小学校 | 35万2,566円 | 166万6,949円 |
中学校 | 53万8,799円 | 143万6,353円 |
高等学校 | 51万2,971円 | 105万4,444円 |
文部科学省『令和3年度 子供の学習費調査』より筆者作成
同じ学校教育の過程であっても、公立と私立で価格に大きな差があることがわかります。
子育て世代は私立に通わせたいと考えていても、現在の貯金では厳しい状態にある時、学校教育の費用をどのように確保するべきか悩んでいる方も多いことでしょう。
教育方針として最初から公立に通わせると決めているのであれば問題ありませんが、お金を理由に私立に通わせたくても通わせられないという状況は避けたいところです。
出産費用はもちろん、学校教育の費用に悩まされないためにも、子育て世代には一定の貯金が必要になります。
子育て世代が毎月貯金するべき金額の目安は貯蓄率をもとに求めることができます。
世帯人数が2人以上である手取り収入・貯金に回せる資金・貯蓄率の平均データを紹介します。
世帯人数 | 手取り | 貯金に回せる資金 | 貯蓄率 |
2人 | 42万2,879円 | 13万4,897円 | 31% |
3人 | 51万813円 | 18万9,528円 | 37% |
4人 | 54万9,106円 | 21万5,267円 | 39% |
5人 | 56万4,650円 | 19万6,967円 | 34% |
6人以上 | 53万432円 | 14万8,740円 | 28% |
総務省『家計調査 2022』より筆者作成
上記のデータから、子育て世代の貯蓄率は30%程度が理想であることがわかります。
貯蓄率30%は、仮に手取り収入が40万円であったとき、12万円以上を貯金に回すことで達成できます。
ご自身の手取りの収入の30%を目安に、毎月貯金することを目標にしましょう。
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子育て世代で貯金が思うようにいかない場合や、継続して貯金できない理由は3つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
結婚して子育て世代になった方で、貯金がうまくいかない理由としては、独身の頃と同じ基準で貯金を考えていることが原因になっている場合があります。
独身は結婚後よりも貯金しやすい環境にあり、結婚前は実家で暮らしていた場合はあまり意識しなくても貯金が貯まるケースも考えられます。
しかし、結婚後には独身と同じ水準で貯金を続けることは難しく、意識して貯金しようと考えていなくても貯金が貯まる環境にあった場合は、急に貯金ができなくなってしまう場合があるため注意が必要です。
ご自身は貯金ができないと考えていても、実際には他の子育て世代と比較しても貯金ができているケースもありますが、独身の基準で貯金を考えるとうまくいかないと感じることも多いため、先ほど紹介した貯金額の目安も参考に無理のない貯金額を見直しましょう。
結婚して子育て世代になってからまったく貯金ができなくなった場合や、独身時代から貯金が苦手であった場合は、貯金の基本から見直すことをおすすめします。
貯金の基本は家計簿をつけることにあり、子育て世代は夫婦の出費と、子どもに対する出費をすべて把握して、家計のお金の流れを理解することから始めましょう。
収支を把握していなければ、貯金が増えていたとしても具体的にいくら増えているのかわからない状態になり、いくら貯金すればいいのかわからないため、貯金に対して漠然とした不安を持ってしまいます。
また、家計簿をつけることで、無駄な出費を把握しやすくなり、支出を減らす効果も期待できることから、子育て世代が貯金するなら家計簿をつけることは必須です。
現在の貯金がプラスであっても、反対に貯金ができずに支出がマイナスの状態にあったとしても、家計簿をつけて正確な現状を知ることが重要になります。
貯金を増やすために節約するにあたって、優先順位をつけて節約を効率的におこなうことが重要です。
子育て世代は収入を得るための仕事に加えて、育児も両立する必要があるため、節約する場合はタイムパフォーマンスを意識しましょう。
例えば、10円の節約をするために、30分かけて隣町のスーパーで買い物をすることは、タイムパフォーマンスの悪い節約になります。
一方で、効率のいい節約は、毎月継続してかかる水道・ガス・光熱費などの固定費から別の会社に乗り換えるなどの方法で安く契約できる方法を見直して、継続してかかる費用を抑えることで長期的な節約効果を生むことです。
ほかにもサブスクリプションの契約が多い場合は、使用していないサービスはないか見直してみましょう。
固定費から順に見直し、家計簿から無駄な出費がないかどうかを確認してから、余裕があればタイムパフォーマンスがそこまでよくない節約を考えるのがよいと考えられます。
子育て世代が効率的に貯金を増やすなら、資産運用を始めることもおすすめです。
20~40代の子育て世代は、預金だけでなく、さまざまな形で金融資産を保有しています。
各金融商品について、20~40代の二人以上の世帯の保有割合をまとめました。
20代 | 30代 | 40代 | |
貯蓄型保険 | 31.6% | 37.5% | 34.7% |
個人年金保険 | 22.2% | 25.3% | 24.2% |
債券 | 5.3% | 4.9% | 4.5% |
株式 | 22.2% | 28.5% | 28.4% |
投資信託 | 22.2% | 29.8% | 27.3% |
その他金融商品 | 5.3% | 6.8% | 6.2% |
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和4年)』より筆者作成
貯蓄型保険などはその性質から資産運用といわれることもあり、子育て世代に適した保険もあるため、人気を集めています。
投資信託・株式などの金融商品の保有割合も3割近くあり、近年になって保有率が高まってきています。
子育て世代が効率的に貯金をするなら預金だけではなく、資産運用も始めることで、子どもの学校教育費の用意をはじめとする将来への不安を解消しやすくなるため検討してみましょう。
子育て世代におすすめの資産運用を3種類紹介します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
貯蓄型保険は保険料を掛け捨てるのではなく、積み立てる形で保険料を支払う仕組みの保険であり、解約や満期時には所定の利息を加えたうえで支払った保険料が返還されることから、安定した資産運用の方法として知られています。
貯蓄型保険のメリットは、保険料を積み立てる形で実質的に貯金ができることに加えて、いざというときには保険による保証が受けられる点です。
子育て世代に適した貯蓄型保険には学資保険があり、子どもの教育費の準備を目的に保険料を積み立てられます。
万が一にも契約者が死亡・高度障害状態など所定の状態になった場合は保険料の払い込みが免除され、子どもは学資保険から受け取れる教育資金により進学を続けることが可能です。
子育て世代の方で子どもの教育資金の確保を第一の目的に資産運用を始めるなら、貯蓄型の保険料の支払い形式である学資保険に加入することをおすすめします。
ただし、貯蓄型保険は共通して、途中解約をする場合は解約返戻金が支払った保険料を下回るリスクがあるため、理解したうえで加入するようにしましょう。
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債券は国や企業が元本と利息の支払いを約束し、期日に債務を履行する金融商品のことです。
個人向け国債は、個人でも債券を購入しやすいように1口1万円で購入できる債券であり、ローリスクローリターンで運用できます。
債券には発行元が元本を支払えない状態になると元本割れのリスクがありますが、国債は日本国が発行元であるため信頼性が高いです。
途中解約ではもらえる利息が減少しますが、元本の支払いは日本国が保障しています。
子育て世代でリスクを抑えた資産運用を始めたい場合は、個人向け国債から始めるのがよいでしょう。
投資信託は、資産運用の専門家に資金を預けて、預かった資金をまとめて運用し、収益を出資者に分配する投資方法です。
専門家に運用を任せられることから投資初心者も始めやすく、NISAやiDeCoなど非課税制度の対象になっている金融商品であることから、子育て世代の資産運用で人気を集めています。
投資信託は始めるハードルが非常に低く、100円から始められるだけでなく、利用する証券会社によっては貯まったポイントを投資信託の購入資金にできます。
子育て世代のなかにはポイ活をしており、できる限り普段のお買い物でポイント還元を重視している方もいるかもしれませんが、投資信託は貯まったポイントを利用して始められる投資です。
ただし、元本割れの危険性もあるため、5年以内に子どもの教育資金にするはずのまとまった資金を運用するにはリスクが高くなっています。
ポイントを含めて余裕資金で始めることが理想であり、貯金の一部を毎月投資信託の運用に回すなどのやり方で投資してもよいでしょう。
30代の子育て世代の間では約3割の人が保有している金融商品であり、ポイントを含めて少額から投資できるため、リスクを理解したうえで気軽に投資できる金額を投資するのがおすすめです。
子育て世代の貯金について紹介しましたが、子育てに必要な出費の目安を含めて用意しておきたい資金をできる限り貯金しておきたいところです。
そのためには、貯金の基本を理解して、資産運用も同時に始めることで効率的な貯金を目指していく必要があります。
子どもの教育資金の用意から老後の資産形成まで将来に不安がある場合は、家計の金融の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談すると、お金に関する漠然とした不安を解決する助けになります。