一戸建ての住宅を所有する方でこれから固定資産税を納める場合や、これから所有する予定がある方で固定資産税の平均額がいくらであるのか、気になる方もいることでしょう。
固定資産税の額は建物・土地の価格で変動するだけではなく、適用できる軽減措置、物件が所在する地域などによっても変動します。
不確定要素が多過ぎることから、条件を指定しなければ、明確にいくらが目安と言い切ることは難しいかもしれません。
この記事では、一戸建ての固定資産税の平均額について計算方法・軽減措置を紹介したうえでシミュレーションもおこない、できる限り具体的に解説します。
一戸建ての固定資産税の支払いに関する注意点もまとめているため、最後まで読むことで固定資産税の支払いに対する具体的な認識を持てることでしょう。
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固定資産税は、土地や建物を所有している方が支払う地方税です。毎年、1月1日時点を基準に税金が課されます。
一戸建て住宅の固定資産税の目安は、年間10万円~15万円前後といわれることが多いです。
一般的には1.4%の税率で算出されますが、軽減措置があり、物件の条件や地域によっても金額は変動します。
将来に渡って全国で通用する明確な平均値・目安を示すことは難しく、固定資産税の徴収実績などを公開する総務省の公的な資料においても、平均値は発表されていません。
一戸建ての固定資産税は土地・建物の評価額、軽減措置以外でも、以下の要素で変動することがあります。
変動要素 | 内容 |
地域 | 自治体による税率の違い、周辺地域の地価動向の影響 |
建物の構造 | 木造・鉄筋コンクリート造など建材による耐用年数の影響 |
築年数 | 築年数が増加すると建物の評価額は減少する |
設備 | 建物の高価な設備は固定資産税を増額させる |
さまざまな要因で変動することから、固定資産税の額を具体的に知りたいなら、個別のケースにおいて条件を指定して計算しなければなりません。
固定資産税の目安を知るなら、専門家に相談する際に、固定資産税に関しても意見をうかがっておくといいでしょう。
一戸建ての固定資産税の計算方法は、土地部分と建物部分にわかれています。土地部分と建物部分を計算して合算することで、固定資産税額を求められます。
土地部分と建物部分の計算方法を、それぞれ詳しく解説します。
土地部分の固定資産税は、以下のとおりに計算します。
土地の評価額は、一般的に公示価格の約70%とされています。例えば、公示価格が3,000万円の土地の場合は、固定資産税の評価額は2,100万円となります。この場合の固定資産税額は次のとおりです。
実際の土地部分の計算では軽減措置を適用するため、上記ほど固定資産税が高くなることはありません。しかし、基本的な計算の流れは、軽減措置を適用する場合も同様です。
建物部分の固定資産税の計算方法は、以下のとおりです。
建物の評価額は、再建築価格に経年減点補正率を掛け合わせて算出する仕組みです。
再建築価格は同一の建物を新築する際に必要な建築費用であり、経年減点補正率は年数の経過による建物の価値の低下を表す割合です。
実際に計算するよりも、固定資産課税台帳に登録されている価格を参照するほうが、建物の評価額が早くわかるでしょう。
固定資産課税台帳は、納税者本人と同居家族であれば各自治体の役所から閲覧できます。固定資産税を計算する場合は、確認しておきましょう。
新築の一戸建て住宅であれば、建物の評価額は物件価格の60%程度といわれています。例えば、2,000万円の建物であれば評価額は1,200万円です。この場合の固定資産税額は次のとおりです。
建物部分の固定資産税を求められたことから、土地部分の固定資産税と合算すれば固定資産税の全額が計算できるようになりました。
ここまでの計算を一つにまとめるなら「29.4万円(土地部分の固定資産税) + 16.8万円(建物部分の固定資産税) = 46.2万円」と求められます。
軽減措置を適用していないため目安にはなりませんが、計算方法の手順は後述するシミュレーションにおいても変わりません。
一戸建ての固定資産税では、軽減措置を適用できます。土地と建物で分けて、軽減措置を紹介します。
一戸建ての土地部分の軽減措置を以下にまとめました。
住宅用地 | 軽減率 |
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 固定資産税評価額の6分の1 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 固定資産税評価額の3分の1 |
土地の面積が200㎡以下の部分は、固定資産税評価額の6分の1に軽減されます。また、200㎡を超える部分は、固定資産税評価額の3分の1に軽減されます。
例えば、300㎡の面積を持つ土地であれば、200㎡の部分に関しては6分の1に軽減され、200㎡を超える100㎡の部分は3分の1に軽減される仕組みです。
一戸建ての住宅に適用できる軽減措置を以下にまとめました。上記の軽減措置は2026年3月31日まで適用される予定です。
【一般住宅】
住宅の種別 | 適用期間 | 軽減率 |
一般の住宅 | 3年 | 固定資産税評価額の2分の1 |
3階建以上で耐火構造の住宅 | 5年 |
【長期優良住宅】
住宅の種別 | 適用期間 | 軽減率 |
一般の長期優良住宅 | 5年 | 固定資産税評価額の2分の1 |
3階建以上で耐火構造の長期優良住宅 | 7年 |
長期優良住宅は、長期間にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられ、国の定める基準を満たした性能の高い住宅を指します。
固定資産税評価額の軽減率は共通して2分の1ではありますが、適用期間は住宅の種別によって異なります。
上記の固定資産税の計算方法と軽減措置を踏まえて、実際に一戸建ての固定資産税のシミュレーションをします。
物件価格が3,500万円の一戸建てにかかる固定資産税を、以下の条件で計算します。
固定資産税評価額は、土地が公示価格の70%、建物は建築価格の60%と仮定して算出しました。
上記の評価額をもとに土地・建物の固定資産税をそれぞれ計算します。
【土地の固定資産税の計算】
最後に土地と建物の固定資産税を合算して、一戸建てにかかる固定資産税を求めましょう。
【一戸建ての固定資産税】
一戸建ての3,500万円の物件にかかる固定資産税は9万33円です。
物件価格が5,000万円の一戸建てにかかる固定資産税も、同様に求めてみましょう。
土地を公示価格の70%、建物を建築価格の60%で計算して評価額を算出します。
上記の評価額をもとに土地・建物の固定資産税をそれぞれ計算しますが、土地部分は200㎡以下の部分と200㎡を超える部分で軽減措置の割合が異なるため、それぞれ計算して合算します。
【土地の固定資産税の計算】
200㎡以下の部分の固定資産税額は、次の計算式で求められます。
軽減措置の割合ごとに計算した土地の固定資産税と建物の固定資産税を合算して、一戸建てにかかる固定資産税を求めましょう。
【一戸建ての固定資産税】
よって、一戸建ての5,000万円の物件にかかる固定資産税は13万1,599円です。
軽減措置を含めてシミュレーションをおこなったため、現在の税法において同様の価格帯で一戸建ての物件を所有する場合は、参考になる数値といえるでしょう。
より正確に知りたい場合は、上記のシミュレーションを参考にご自身で固定資産税を計算してみてください。
最後に、一戸建ての固定資産税を支払うにあたって総合的に注意するべきポイントをまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
固定資産税は、毎年1月1日の時点において、その物件の所有者が誰であるかを基準に課税されます。
税務署や自治体の担当部署は、1月1日時点の情報をもとに所有者に対して固定資産税の課税をおこないます。
転居や不動産の名義変更手続きをおこなっている場合、1月1日時点で正式な登記がなされていないと、後に税務上のトラブルや誤解が生じる可能性があるため注意が必要です。
極端な例ですが、1月2日に物件の所有者が変わった場合も、その年の固定資産税の全額を旧所有者が負担します。
そのため、物件を売買する際には売主と買主で固定資産税を日割り計算して、物件の売買代金に含めることで適切に負担することが一般的です。
固定資産税は1月1日の所有者を基準に負担が決まることから、当日までに物件の所有権を明確にしておきましょう。また、物件の売買では旧所有者が代わって負担する固定資産税が売買代金に含まれることを理解しましょう。
固定資産税の軽減措置は、土地・建物において特定の条件を満たす場合に適用できますが、申告が必要な場合もあります。
例えば、新築住宅の軽減措置は、建築後に自治体へ申請書類を提出し、必要な検査や審査を受けることが求められます。
期限までに申請をおこなわなければ、軽減措置を受けられず固定資産税が増加するため気をつけましょう。
軽減措置に関しては、各自治体によって取り扱いや必要書類、審査基準が異なるため、事前に市区町村の税務課や住宅担当窓口に問い合わせ、詳細な手続き方法を確認することが重要です。
軽減措置は必ずしも自動的に受けられるものではないことを、理解しておきましょう。
固定資産税の納付は、各自治体が定める納付期限を厳守することが非常に重要です。固定資産税は年に数回に分けて納付することが一般的です。
納付期日を過ぎると自動的に延滞金が発生します。延滞金は、期限を過ぎた日数に応じて日割り計算され、元々の税額に上乗せされるため、延滞日数によっては支払総額が大幅に増加するかもしれません。
延滞が続くと、自治体によっては最終的に差し押さえなどの強制執行措置が取られるケースもあります。
納付期日を必ず確認し、その期日前に十分な資金を用意しましょう。
万が一、事情があり支払いを延滞する場合は、自治体の税務課に事前に相談して、分割納付やそのほかの救済措置が利用できるかを確認してください。
空き家は放置されることで、建物の劣化や老朽化が進行します。場合によっては、解体費用が発生するかもしれません。
自治体は空き家を放置することが、地域全体の景観悪化や防犯上の問題にもつながると考えることもあり、空き家の評価額を見直し、固定資産税を増加させることがあります。
空き家は、管理が行き届いていないという理由から軽減措置の適用を受けられず、人が住んでいる建物に比べて固定資産税が高くなりやすいです。
一戸建てでも空き家を所有している場合は、固定資産税の負担が大きくなるリスクがあるでしょう。
固定資産税の土地の軽減措置は、一般的に建物が存在する場合に適用される制度です。
建物が存在していない状態で土地のみを所有している場合も、固定資産税を支払う必要があり、建物が建っている場合よりも固定資産税が高くなる可能性もあります。
例えば、1月1日時点では土地のみしか所有していない場合、軽減措置が適用されないことで、土地部分の固定資産税の負担が大きくなります。
将来的に一戸建ての住宅を建設する予定があっても、現在の時点では建物が存在していないケースでは、固定資産税に注意が必要です。
一戸建ての固定資産税は物件の評価額や適用される軽減措置、所在する地域など多くの要素で変動するため、最新の情報を自治体や専門家に確認しましょう。
そのため、固定資産税だけでなく住宅について総合的な提案を受けられる、専門家のファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
毎年変化する固定資産税の現状に対して、専門家の意見を取り入れることで、計画的な対策を講じることができるでしょう。