消費税は、商品を購入するにあたって幅広い対象に課される税金です。しかし、なかには「中古住宅には消費税がかからない」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
結論から言うと、かからないケースがあるため、消費税がかからないことは本当です。しかし、かかるケースもあるため、すべての中古住宅に当てはまるとは限りません。
また、消費税のかからない中古住宅が、必ずしも住宅の購入費用を節約するにあたってお得であるという考え方も危険です。
この記事では、中古住宅と消費税の関係をケース別に紹介し、消費税がかからない物件を見分ける方法を紹介します。
物件を購入するにあたって、消費税以外の項目にも注目することが重要です。非課税を理由に中古住宅の購入を検討している場合は、注意点を含めて最後まで内容を確認するようにしてください。
コンテンツページ
住宅を購入するにあたって、新築の場合には消費税がかかります。しかし、中古住宅を購入する場合は、消費税がかからない場合もあります。
税法上の理由を説明すると、買主も売主も業者ではなく、個人である場合の不動産売買は個人間取引に該当します。消費税は、個人間取引にかかる税金を非課税としているため、消費税がかかりません。
個人間取引に該当する売買であれば、中古住宅だけではなく中古車も対象となり、金額の大小にかかわらず非課税となります。
上記の内容を踏まえたうえで、具体的に中古住宅で消費税がかからないケースと、かかるケースを見ていきましょう。
中古住宅で消費税がかからないケースは、売主と買主の両方が個人である場合です。
簡単に説明すれば、特定の個人であるAさんが所有している住宅をBさんに売る取引が成立したのであれば、非課税になります。
このケースでは、友人や知人など周囲に物件を売りたい人がいて、購入できる状況にある場合しか成立しないと考えるかもしれません。
しかし、中古住宅を不動産会社から購入する場合、不動産会社は仲介の立場を取っていることもあります。
このケースでは実際の売主は個人であるため、個人間取引に該当することから、消費税はかかりません。
そのため、現実的にも十分に成立する可能性があるケースといえるでしょう。
一方で、中古住宅で消費税がかかるケースは、個人間取引に該当しない場合です。
業者である不動産会社が売主・買主として取引に関わる場合は、事業者が事業を目的にした取引に該当するため、消費税の課税対象になります。
よって中古住宅は、個人間取引を除けば消費税がかかります。買主・売主の違いから中古住宅における消費税の課税関係を以下にまとめました。
売主 | 買主 | 消費税 |
個人 | 個人 | 非課税 |
業者 | 課税 | |
業者 | 個人 | 課税 |
業者 | 課税 |
不動産会社が公開する物件情報をもとに、中古住宅で消費税がかからない建物を見分ける方法を理解しておきましょう。
注目する部分は物件情報の取引態様です。取引態様は主に以下の3つが記載されています。
取引態様 | 内容 |
売主 | 不動産会社が自ら所有する物件を直接販売する形態 |
代理 | 売主から委託を受けた不動産を売主に代わって販売活動をする形態 |
仲介(媒介) | 不動産会社が売主と買主の間に立って取引を仲立ちする形態 |
取引態様ごとに、消費税の課税の有無を解説します。
不動産会社がポータルサイトなどで公開する物件情報を確認して、取引態様が売主である場合は、消費税がかかります。
取引態様が売主である場合は、不動産会社が所有する物件を買主に直接販売することから、個人間取引に該当しないため非課税になりません。
この場合は消費税がかかることから、非課税の中古住宅を探したい場合は、すぐに見極められるポイントといえるでしょう。
代理とは、売主から委託を受けて不動産会社が買主を探して販売する形態です。仲介または媒介と記載されている場合は、不動産会社が売主と買主の間に立って取引を仲介します。
上記のように記載されている場合でも、必ずしも非課税になるわけではありません。依頼している売主の立場を確認する必要があります。
売主が個人の場合は代理、仲介(媒介)では物件が非課税になります。一方で、依頼している売主が業者の場合は、消費税を課されるため注意しましょう。
物件情報に取引態様・売主の情報が掲載されていない場合は、不動産会社に問い合わせるようにしてください。
中古住宅では、上述した条件をもとに課税が決定されます。中古住宅にはさまざまな費用がかかり、なかには消費税がかかる費用もあります。
物件の購入に対するすべての費用に対して、消費税がかからないわけではありません。具体的にかかる費用を以下にまとめました。
費用の枠組み | 費用の種類 |
物件にかかる費用 | 仲介手数料 |
司法書士への報酬 | |
住宅ローンの費用 | ローン事務手数料 |
その他 | リフォーム費用 |
引越し費用 |
諸費用でも売買契約書・金銭消費貸借契約書にかかる印紙税、登録免許税などの税金は非課税です。火災保険・団体信用生命保険(団信)の保険料にも税金はかかりません。
消費税がかかる費用の内容を具体的に見ていきましょう。
仲介手数料は、不動産会社に物件の仲介を依頼した際に支払う手数料です。法律で上限が定められており、一般的には以下の計算式で求められます。
物件価格が5,000万円の場合は、以下のとおりです。
5,000万円×3%+6万円=156万円
消費税10%を加算して171万6,000円と求められます。
計算式からわかるとおり、仲介手数料は非課税となる中古住宅であっても、消費税が課される費用です。
ただし、物件の売買代金が400万円を下回る場合は、異なる計算式が使用されるため、例外があることを理解しておきましょう。
司法書士の費用は、登記手続きや抵当権設定などの法的手続きを、司法書士に依頼する際の報酬です。
登記手続きは、土地や建物などの不動産に関する情報を登記簿に記録します。物件の権利関係を明らかにするために欠かせません。
抵当権は、住宅ローンの借り入れをおこなう際に、債務者が所有する不動産を担保として、金融機関が抵当権を設定することを指します。
司法書士への報酬には消費税が課税されますが、地域や依頼内容によって相場が異なる点を理解しておきましょう。
ローン事務手数料は、住宅ローンを組む際に金融機関に支払う手数料です。金融機関やローン商品によって、2種類の支払い方法があります。
形態 | 内容 | 相場 |
定額型 | 借入金額に関係なく一定の金額を支払う | 3万円~5万円程度 |
定率型 | 借入金額に対して一定の割合の金額を支払う | 借入金額の2%程度 |
どちらの形態を選ぶ場合でも、消費税が課税されます。
物件の改修や修繕にかかるリフォーム費用、新居への移転に伴う引越し費用も、消費税が課税されます。
特に中古住宅を購入する場合は、リフォーム費用が発生しやすいことから、修繕の費用がかさむことで支払う消費税が増える懸念があります。
重要な費用であるため、消費税の負担があることを忘れないようにしましょう。
中古住宅と消費税の関係を解説しましたが、必ずしも消費税のかからない中古住宅を購入することがお得とはいえません。
新築住宅や消費税のかかる中古住宅と比較して、初期費用を抑えられる可能性はあります。しかし、消費税が建物にかからないことを重視して物件を選ぶと、デメリットを見落とすかもしれません。
消費税のかからない中古住宅を購入する際の注意点を以下にまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
中古住宅は建物部分がケースによって消費税が非課税になりますが、土地部分は条件なしで非課税となります。
新築住宅も中古住宅と同様、土地部分には消費税が課されません。
土地は、所有権の移転を取引対象とすることから、消費税を課すのに適さないと考えられているためです。
つまり、建物が新築か中古かといった条件に関わらず、不動産取引において土地に消費税はかかりません。
新築住宅と中古住宅で生じる消費税の差は建物部分のみです。
土地価格が4,000万円、建物価格が1,000万円の物件で消費税を比較すると、以下のとおりです。
内容 | 課税される物件 | 非課税の物件 |
土地部分 | 4,000万円 | 4,000万円 |
建物部分 | 1,000万円 | 1,000万円 |
建物部分の消費税 | 100万円 | 0円 |
総額 | 5,100万円 | 5,000万円 |
消費税は建物部分以外にはかからないことから、合計価格の5,000万円に対して消費税がかかる前提で500万円と計算して消費税を比較すると、節税効果が大きく変わってしまいます。
課税される住宅と課税されない住宅を比較する場合は、建物部分の消費税を算出するようにしましょう。
中古住宅の場合、消費税の課税対象となる建物は、販売価格に消費税が含まれた総額表示が原則となっています。
購入者が実際に支払う総額をわかりやすくするための措置であり、内訳を明示して消費者が正確な負担額を把握できるように配慮されています。
総額表示されている物件の購入価格を、税抜の本体価格と勘違いして非課税の物件と比べると、課税対象の住宅を実質的に二重課税で比較してしまうため気をつけましょう。
課税対象の住宅で非課税の住宅よりも優れた物件があっても、消費税の比較方法に勘違いがあれば選びにくくなります。
物件の価格表示では、国税庁が総額表示を義務付けていることから、法律に則った業者であれば例外はありません。
中古住宅の購入では、生活環境の改善や資産価値向上のためにリフォームやリノベーションを検討するケースが多く見られます。
規模や内容により工事費用が大きく変動し、部分改装から全面改装まで幅広い選択肢があります。
物件の購入価格を少しでも節約したい場合は、リフォーム費用をできる限り節約したいところです。改修費用の発生を避けるために、新築住宅を購入する選択肢もあります。
消費税が非課税であることを重視して物件を選ぶと、購入後に想定されるリフォーム・リノベーションの費用を見落としてしまうかもしれません。
また、リフォーム・リノベーションの費用にも消費税がかかるため、改修費用がかさむと建物部分で節約した消費税の節税効果まで失われることも考えられます。
住宅の購入では初期費用だけでなく、将来の改修費用も視野に入れて計画する必要があります。目先の消費税の節税にこだわると、最終的に消費税を含めた総支払額が増加するかもしれません。
住宅ローン控除は、年末のローン残高から一定の控除率で税金を減税する大きな税制優遇措置であるため、多くの住宅購入者が適用を前提に物件を選んでいます。
住宅ローン控除の適用条件は住宅の種別によって異なりますが、新築住宅よりも中古住宅のほうが適用条件が厳しくなっています。
そのため、消費税の課税・非課税にかかわらず、すべての中古住宅がこの制度の恩恵を受けられるわけではありません。
一般的な住宅ローン控除の適用条件とは別に、中古住宅の住宅ローン控除の適用条件を以下にまとめました。
中古住宅で住宅ローン控除を受けるためには、現行の耐震基準を満たしていることが重視されます。要件を満たしていない住宅では、税制上の優遇措置を受けられません。
住宅ローン控除は10年以上にわたって建物部分だけでなく、物件価格全体を対象とする住宅ローン残高に基づき、税金を控除できる制度です。
そのため、住宅ローン控除は初期費用である消費税の節税よりも重視されます。
消費税の節税を重視して、住宅ローン控除の適用を受けられない物件を購入することは、節税において損になるかもしれません。
非課税の中古住宅を購入しても、その後にかかる改修費用や住宅ローンの返済負担を考慮すると、費用を抑えられるとは限りません。
仮に同等の条件を満たしている中古住宅が2つある場合に、消費税の負担がある住宅と負担がない住宅を選択するのであれば、後者になると考えられます。
しかし、物件の選択を総合的に判断するにあたって、消費税の課税の有無が必ずしも優先されることはありません。
総合的な条件をもとに比較して購入する物件を判断するなら、個人の判断だけでは難しいことから、専門家への相談をおすすめします。