40代でまとまった貯金がない状態でも家を購入できるのか、マイホームが欲しいと考えているなら、不安に思う方もいることでしょう。
結論から言うと、40歳で貯金がなくても家を買うことは理論上は可能です。
ただし、40代でも具体的に何歳なのか、まとまった貯金がないのか、貯金額がゼロであるのかによって、難易度は変わってくるでしょう。
この記事では、40歳で貯金がなくても家を買うことができる理由を解説し、注意点と買うためのポイントを合わせてご紹介します。
すべてのケースにおいて、ご自身が理想とするマイホームを購入できると確約することは、難しいかもしれません。しかし、記事を読むことで、少しでも家を買うという目標に近づく方法がわかるはずです。
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一般的に、住宅購入のタイミングは30代がいいと言われることがあります。そのため、40代では家を買うには遅いと考えるかもしれません。
しかし、統計データなどに目を向ければ、40代で住宅を購入することはけっして遅くありません。頭金として支払えるようなまとまった貯金がない場合も、住宅ローンを組める可能性があります。
40歳でも貯金なしで家を買うことができる理由を順序立てて解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
現在の不動産市場は、統計的にも40代での購入が一般的となっています。以下に住宅の種別ごとに、住宅購入の平均年齢をまとめました。
住宅の種別 | 平均年齢 |
注文住宅 | 44.8歳 |
注文住宅(新築) | 42.1歳 |
注文住宅(建て替え) | 60.6歳 |
分譲戸建住宅 | 38.2歳 |
分譲マンション | 43.0歳 |
中古戸建住宅 | 46.7歳 |
中古マンション | 46.7歳 |
国土交通省『令和5年度 住宅市場動向調査報告書』より筆者作成
分布としては注文住宅、分譲マンションでは30代の割合が大きいものの、平均年齢は40代です。中古戸建住宅は平均年齢が46.7歳であり、30代と40代が同率の分布となりました。
40代は社会人としてのキャリアが確立され、収入も安定している時期であるため、社会的信用の高さからローンの審査に通りやすいことが有利な点と考えられます。
上記の結果を考えるなら、金融機関も40代で家を買うことが遅いと判断するケースは少ないといえるでしょう。
よって、住宅ローンの返済期間にもよりますが、家を買うことに40代という年齢はマイナスになりにくいと考えられます。
住宅ローンを組むうえで重要になる項目は、完済時年齢です。返済期間が長期化して完済時年齢が遅くなるほど、審査で不利になります。
完済時年齢を考えるうえで、参考になる住宅ローンの返済期間の平均は、以下のとおりです。
住宅の種別 | 返済期間の平均 |
注文住宅 | 32.7年 |
土地付き注文住宅 | 34.4年 |
分譲戸建住宅 | 29.7年 |
分譲マンション | 28.0年 |
中古戸建住宅 | 26.2年 |
中古マンション | 29.0年 |
国土交通省『令和5年度 住宅市場動向調査報告書』より筆者作成
住宅の種別によって平均値は異なるものの、返済期間の平均は25年~35年程度、40歳であれば65歳~75歳に完済できる計算です。
金融機関では完済時年齢の上限を一般的に80歳未満に設定しているため、平均的な返済期間でも住宅ローンを組みやすいでしょう。
ただし、完済時年齢が70歳を超える場合が多いことから、定年後も返済が続く可能性が高くなるため、返済計画に注意が必要です。
さまざまなデータを見て、40歳で家を買うことに問題はないと理解できたことでしょう。一方で、「貯金なし」は問題になるポイントです。
貯金なしでも住宅ローンを組めるのかという問題に対しては、フルローンを利用すれば可能といえます。
フルローンは、物件価格の全額をローンで借り入れる手法であり、頭金を支払わなくても住宅購入ができます。
よって、フルローンを利用すれば、理論上は住宅ローンを貯金なしで組めるでしょう。
ただし、あくまで理論上の話であり、貯金なしでフルローンを活用して住宅ローンを組むことは、現実的には難しい部分があります。
仮に組めたとしてもリスクをともなうため、40歳で貯金なしで家を買うにあたって気をつけたい注意点を見ていきましょう。
40歳が貯金なしで家を買う場合の注意点を5つまとめました。
「貯金なし」と一言でいっても、さまざまな状態が想定されます。住宅ローンのまとまった頭金を支払えるほどの貯金がないケース、貯金額がゼロであるケースが考えられるでしょう。
貯金がゼロ、またはゼロに近い場合は、今すぐに住宅を購入することが難しいかもしれません。
しかし、現時点では難しくても、貯金を増やすことで少しでも理想に近い家を購入できるようになるでしょう。
住宅を購入する前に、毎月の収入から少しでも貯金に充てられるように、家計の収支を見直すことから始めてください。
住宅の購入では、物件価格をフルローンで賄うことができます。しかし、手付金・諸費用など現金で支払う必要がある費用もあります。
手付金は住宅購入の契約時に発生する費用であり、一般的に物件価格の5%~10%程度かかります。
物件の諸費用は、家の購入や住宅ローンを組むために必要になる費用です。諸費用の一例を以下にまとめました。
諸費用 | 内容 |
融資手数料 | 住宅ローンの申し込み手続きに対し金融機関へ支払う手数料 |
ローン保証料 | ローン返済が不能となった場合に備えて保証会社と保証契約を結ぶ費用 |
印紙税 | 不動産売買契約書や住宅ローン契約書などの作成時に課される税金 |
登録免許税 | 不動産を登記する際に課される税金 |
司法書士報酬 | 登記手続きを司法書士に依頼する際に支払う報酬 |
物件調査手数料 | 物件の評価や調査をおこなう際に発生する手数料 |
諸費用を含めたローンを組むことも、不可能ではありません。しかし、現実的に貯金がゼロの状態で全額を支払うことは難しいでしょう。
諸費用は一般的に物件価格の6%~10%程度かかるため、手付金と合わせて物件価格の10%~20%程度の現金は必要になります。
フルローンで貯金から頭金を支払わない場合も、手付金・諸費用を支払える貯金は必要であることを理解しておきましょう。
住宅ローンの審査では、基本的に収入の安定性、職業、勤続年数、信用情報などが重視されます。40代は社会的信用力が高くなりやすいことから、基本的な審査基準では評価されやすくなります。
一方で、自己資金が全くない場合、収入が減少した際に返済リスクをカバーできないと判断されるため、審査条件が厳しくなることも考えられます。
特に、フルローンは借入金額が大きくなるため、金融機関は住宅ローンの返済計画、リスク管理が適切であるかを慎重に判断するでしょう。
そのため、収入の安定性が評価されている40代でも、貯金が全くない状態では、理想的な条件で住宅ローンを組むことは難しいかもしれません。
他のローン、クレジットカードなどで支払いを延滞したことがあり、信用情報にキズがある場合は、住宅ローンの審査ではさらに不利になります。
貯金がない状態で、フルローンで住宅ローンを組めたと仮定しましょう。頭金を支払わないということは、借入金額が物件価格の全額となります。
借入金額が大きくなれば、毎月の返済額も増加するため、返済負担が非常に重くなるでしょう。
返済負担が大きい場合、生活費や教育費などとのバランスを取ることが難しくなります。住宅ローンの返済によって、生活全体の質が低下する恐れもあるでしょう。
返済期間を長く設定することで、月々の返済額を抑えられます。しかし、利息負担が重くなるため、総返済額が増加する点に注意が必要です。
予期せぬ出費が発生した場合、返済負担の大きさから返済が困難になり、返済計画が破綻する可能性があります。
急な病気や事故、収入減少などのさまざまな将来のリスクに対して、貯金がなければ対処することが難しいでしょう。
また、初期金利の低さから変動金利を選択した場合は、将来的に金利が上昇すると返済額が増加するリスクもあります。
住宅購入時には予備資金として、半年分の生活費が貯金として残っているとリスクを減らせます。住宅ローンの安定した返済には、一定の貯金が必要といえるでしょう。
40代で家を買うことはできますが、貯金がゼロ、ほとんどない状況で購入することは現実的に難しいかもしれません。
40歳が貯金のない状態から家を買うためのポイントを3つ紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
40歳が貯金ゼロの状態から家を買うためには、効率を重視した貯金を始めることが不可欠です。家の購入には手付金・諸費用など、現金で支払う費用があります。
短期的に住宅の購入に必要な資金を用意するためには、より効率のいいやり方で貯金を始める必要があるでしょう。
まず、家計の収支を正確に把握していない場合は、家計簿をつけるところから始めてください。毎月の収支がわかれば、削減するべき無駄な支出も見えてくるはずです。
節約によって貯金を試みたことはあっても成果が出なかった場合は、専門家であるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
専門家に相談することで、さまざまな視点から貯金を増やすための提案を受けられるため、効率的に貯金しやすくなるでしょう。
貯金の一般的なやり方は、以下の記事も参考にしてください。
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40歳でまとまった貯金がない状態で家を買うなら、できる限り返済負担率の低い返済計画を立てるようにしましょう。
返済負担率は年収に対する住宅ローンの年間返済額の割合であり、金融機関によっても異なりますが、30%~35%程度が上限です。
フルローンや頭金の割合が少ない状態では借入金額が大きくなることから、返済負担率が高くなります。無理のない返済をするうえで、適切な返済負担率は20%以内です。
返済負担率を抑えるために、返済期間を長期に設定するといいでしょう。実際のシミュレーションを例に、返済負担率の違いをまとめました。
返済期間 | 20年 | 35年 |
毎月の返済額 | 17万7,059円 | 11万5,941円 |
返済負担率 | 26.55% | 17.39% |
総返済額 | 4,249万4,160円 | 4,869万5,220 円 |
利息分 | 749万4,160円 | 1,369万5,220 円 |
同じ3,500万円を借りる場合でも、返済期間20年の場合は返済負担率が25%を超える高い水準です。一方、35年の場合は20%以内に収まりました。
ただし、返済期間が長期化すれば、利息の支払いを含めた総返済額が増加する点には注意が必要です。
返済負担率を低くするには、貯金を貯めて頭金を多く支払う以外に、返済期間を長く設定することも効果的といえるでしょう。
返済負担率を下げるために、返済期間を長期に設定するうえで気をつけたいことは完済時年齢です。
40歳で返済期間を30年~35年に設定すると、完済時年齢が70歳~75歳になることから、定年後も返済が続くことになります。
つまり、現役時代と比較して収入が減少したあとも、住宅ローンを返済しなければなりません。定年後も住宅ローンを返済したくない場合は、返済期間を短く設定し、定年前に完済することも選択肢の一つです。
返済期間が長すぎると完済が遅れるだけでなく、総利息が増加し、総返済額が膨らむデメリットがあります。一方で、返済期間を短くすると毎月の返済負担が大きくなり、家計を圧迫します。
そのため、返済期間は適切に設定するようにしましょう。ただし、返済期間は繰り上げ返済を通じて短縮できるため、最初は長期に設定することをおすすめします。
返済期間は最初に短く設定すると、あとから延ばすことは困難です。よって、長期に設定してから貯金に余裕ができたタイミングで繰り上げ返済をおこなえば、利息の軽減効果も期待できます。
計画的に繰り上げ返済をおこなえば、無理なく返済を続けられる返済負担率を保ちつつ、完済時年齢を調整できるでしょう。
40代で貯金が十分でなくても、家を購入することは理論上可能です。しかし、実際には手付金や諸費用などの現金支出、借入金額が増えることによる返済負担の増大などのリスクから難しいでしょう。
家の購入を目指す場合は、まず効率的に貯金を始めて、完済時年齢を考慮した返済負担率が低くなる適切な返済計画を組むことが重要です。
また、継続的に貯金ができる状態になければ、現実的に住宅ローンを毎月返済することも困難といえるでしょう。
貯金ができない現状を見直し、適切な住宅ローンを組みたい方は、ファイナンシャルプランナーに相談しましょう。